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<機関誌「SCOUTING」2022年5月号の記事を本サイトにも掲載しております。内容は機関誌発行当時のものです。>

インタビュー #02

日本連盟 総コミッショナー 村田禎章

スカウティングの教育力を再建する

村田 禎章 総コミッショナー
奈良・北葛城第7団所属。2022年4月、日本連盟総コミッショナーに就任。現在、北葛城第7団 団委員長、奈良県連盟 理事を兼任。

 

—「スカウティングの教育力を再建する」とは

村田 野外活動やスカウトスキルを積み上げることで「スカウティングをしているつもり」になってはいないだろうか、と。それだけではこの運動の目的にあった人は育ちません。B-Pも、スカウティングの題材は最新のものでなければならないと言っています。人権、平和、環境のことも含めて広く世界を見て、いまの日本の若者に必要なものを提供していく。いま、社会が求めているものにスカウトが取り組めるような仕組みづくりをしていきます。

—少人数のボーイ隊が増えています

村田 人数が少なくてパトロールシステムができないという考えから脱却したい。できないからといって隊長が直接指導するのではなく、人数が少なくても、そのなかでリーダーや班員の役割をきちんと定め、テーマに則って活動をすることが大事です。大切なのは、活動のかたちではなく、その本質的な価値を見失わないことです。

—コロナ禍でも活動を止めないカギは何でしょうか

村田 皆さん、スカウトと接触していますか ? ボーイ隊ならば、班長が班員とコミュニケーシ ョンをとっているか。「コロナが終息したら何をしよう ?」と夢を話し合うとか、いま、家でどんなスカウト技能を訓練している ? など。さらに、家で作業したことを合わせれば班の成果になる。やり方を探せばできることはあります。班長の声を久しぶりに聞いて、「会うと厳しいけど電話なら優しいなぁ」と感じる。そういう経験が会いたいなという想いにつながり、いざ集まれるときに皆がやる気になって集まることにつながるはずです。

—総コミッショナー、県コミッショナーと名称が変わりました

村田 スカウティングは運動であり、組織ではありません。日本のスカウト運動推進者としての立場を明確にするため、「総コミッショナー」となりました。そして、各都道府県における代理者が「県コミッショナー」です。連盟に所属する人だけでなく、この運動に参加しようとするすべての人に関わっていくという立場です。さらに、それぞれのブロックを代表する「統括コミッショナー」を設けました。日本連盟の施策を実施するにあたり、それぞれの地域に適したかたちに工夫をこらして進められればと考えています。

—よき指導者の育成も大切です

村田 指導者をリクルートする際に、この活動をどう説明するかが重要だと考えています。「より良き社会 」や「 良き市民 」などと表現しますが、それは具体的にどんなものなのか。「技術や知識を身につけ、人の役に立つことに喜びを感じる。そこに生きがいを感じたり、自分が地域社会の役に立つことを実感できるような人を育てるサポートをしてください」など、培ってきた技術を社会にどう役立てるかが一番大切であるということをきちんと伝えることが肝心です。そうしないと本質を見失ってしまいます。私たちの教育は、決してキャンプの達人を作ることが目的ではありません。

—指導者の「やりがい」を広く伝えたいですね

村田 目の前にいるビーバースカウトがローバースカウトになったときに、どんな青年にな っていて欲しいかを考えながら育てていってほしいと思います。これは大変なことです。カブ、ボーイと年齢が上がるということは、成長に費やす時間がどんどん減っているということです。だからこそ、大事に育ててあげないといけない。現場のリーダーは大変です。しかし、その分のやりがいは大きいし、スカウトの成長をず っと見守っていけます。地域の大人たちが何人も集まって、スカウトの成長を見守り続けている。ここに、この運動の価値があると思います。

—どんな青年を育てていきたいですか

村田 スカウトは、ユニフォームを着ていないときにこそ、真価を問われると思います。職域、学校、地域、家庭などで、みんなの役に立つ青年。「彼がいないと寂しいね」といわれるような、青年。人のことを思う、強く優しい青年。骨太で、でもしなやかな感性をもっている青年。苦労もしたり、時には友達と仲違いして、痛みを知ることもあってそのように育っていくと思います。だからこそ、しんどいことや苦しいこともあえてやる。やって乗り越えた喜びを知ってもらえるように、指導者は叱咤激励してサポートしていければと思います。

聞き手: 理事/広報委員長 澤朋宏

ボーイスカウト日本連盟機関誌「SCOUTING」2022年5月号にも掲載している内容です

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