文字サイズ

■ 野外活動のための安心・安全講座 保護者の き・も・ち ~信頼関係を築くために~ 今号では、視点を変えて、スカウトの安心安全な活動にとって重要な基礎である、指導者と保護者との信頼関係の構築について考えてみましょう。なぜ保護者が重要なのでしょう? 「 セーフ・フロム・ハーム」・安全委員会にくる相談の中には、指導者と保護者の信頼関係の希薄さが問題を大きくしているのではないか、と思われる事例が見受けられます。継続登録者用の登録前研修では、《保護者へ向ける思いやり》として振り返っていただく機会を設けていますが、ここでは「保護者の気持ちと指導者の対応」に焦点を当ててみます( 子どもを入団させてからの年数によって、ステージ分けをしました)。
  ステージ1
入団前後から2年目 多くの方はスカウティングについて知りません。「遊ばせてもらえればそれでいい」と思っている方も多いでしょう。手伝いにきてはみたものの、何をしたらよいか分からず戸惑っている場合もあります。尋ねてみようと思っても、指導者は忙しそうですし、声をかけにくい少し遠い存在です。
対 応 隊指導者だけでなく、団の指導者みんなで保護者に声をかけてみませんか? スカウト運動の目的、原理、方法を伝え、スカウティングの素晴らしさを理解していただくためには、このステージが重要です。成長した先輩スカウトたちの話をしながら、お子さんの興味や家庭の教育方針などを伺ってみましょう。指導者から話しかけてもらえることで、「団に受け入れられている」と安心できるでしょう。
 
  ステージ2
3年目から5年目 団の雰囲気、指導者の人柄、活動内容の充実度なども分かってきます。子どもの様子や他の習い事との比較で、続けさせる必要があるかどうか悩み始めます。デンリーダーや団委員を引き受けるなど積極的に関わってくださる方と、送迎だけになる方と二極化しがちです。
対 応 活動の様子をこまめに報告したり、家庭での取り組み状況を伺ったりしながら、ニーズを把握していきましょう。相談しやすい雰囲気や「受け入れる」姿勢が、居心地の良い団を作ります。指導者や団委員を引き受けてくださる方には、自己流にならないよう、スカウトコースや団委員研修所などの研修の必要性を丁寧に説明することも大切です。
 
  ステージ3
5年目以降 自身も指導者となるなど、積極的に関わりながら「我が子に富士スカウト章を取らせたい。ジャンボリーに行かせたい」と期待します。一方、「惰性で継続させてきたが、長くお世話になっているので、やめるとは言いにくい。部活や受験が理由であれば当たり障りないのでは」とやめていく人もいます。
対 応 団によっては期待に沿えない場合もあるでしょう。「経験がない」「団の方針と違う」と線を引いてしまわず、コミッショナーに相談する、団として実現可能な方向へ舵を切ってみるなど、ニーズに対して真摯に向き合い、団として研鑽を積むことも大切ではないでしょうか?保護者が子どもにボーイスカウトを続けさせたいと思わないのは、「スカウティングに対する理解が得られていない。または、期待した活動が行われていない」ということが理由にあると思われます。不満を口にすることなく退団していくその心の声に、耳を傾けてみませんか?
 
安心安全な活動のために制服仲間を増やそう!
でも待って保護者のホンネボースカウトの制服って、カッコイイです。特に、セレモニーで張り詰めた空気の中に整列する姿は、とても素敵です。でも実際に着るには勇気がいります。なぜでしょうか?我が子がお世話になっていれば、何かしらお手伝いしたいと思う保護者は多いです。嬉しいことですね。でも制服を着るとなると話は別です。「やる気があると思われて、責任の重い役務を振られる」「制服を着ているのだから、○○ぐらいできるよね、と言われないか」と心配します。また、子育て真っ最中、仕事の責任も重くなってきて、家庭と仕事以外には余裕がない年代です。スカウト経験のない保護者が勇気を出して制服を着てくださったときは、よほどスカウティングに惚れ込んだか、素晴らしい指導者を見つけたときです。その想いをくんで、指導者としてぜひ大事に育てていただきたいと思います。
スカウト運動の主役はもちろん子どもたちですが、保護者の気持ち、指導者の対応次第で、スカウトが活動を楽しめなくなってしまうことがしばしば起きてしまいます。スカウトに安心安全な活動を提供できるよう、日ごろから意識して、保護者との信頼関係を築いていただきたいものです。 「セーフ・フロム・ハーム」・安全委員会

ボーイスカウト日本連盟機関誌「SCOUTING」2021年3月号より

<ビーバースカウト カブスカウト そなえよつねに共済 ボーイスカウト ベンチャースカウト ローバースカウト 団運営 >の記事