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■ 野外活動のための安心・安全講座
ココロのそなえよつねに
~思いやり行動ができるとき、できないとき~
「思いやり行動」とは、どんな行動でしょうか? 相手のため、仲間のため、家族のため、社会全体のためになることを、それぞれの立場になって考えて行動することです。つまり、ボーイスカウトの「ちかい」のひとつ、「いつも他の人々をたすけます」ということでしょう。「思いやり行動」のためには、相手を思いやる心の育成が必要です。ボーイスカウトでは、少人数でのグループ編成、異年齢構成、役割分担による活動をとおして、「相手の立場になって考えられる力、行動できる力」が身につくようにしています。

 
1. あなたの「思いやり度」をチェック!
以下の文章を読んで、あなた自身にあてはまる項目を確認してみましょう。
⃞ 人を思いやることが何よりも大切だと思う ⃞ 人が悲しんでいると、自分も悲しくなってしまう ⃞ 人が困っていたら助けてあげたい ⃞ 映画やドラマで感動してよく泣く ⃞ 頑張っている人を見ると応援したくなる
どうでしたか? ✓が多い人ほど、「思いやりのある人」です。 では、✓が多かった皆さんに聞きます。あなたは、いつも思いやり行動ができているでしょうか? できない場合がたくさんありませんか? それはなぜでしょうか?
2. ココロの法則を知っておこう!
法則
人は、思いやりがあっても思いやり行動(人助け)ができないことがある!
思いやり行動ができなくなる(抑制される)条件について、3つほど紹介します。自分の経験に照らし合わせてみましょう。
自分のことで頭がいっぱいのとき 助けたいが、どうしてよいか分からないとき 周りに人がたくさんいるとき
 
自分のことで頭がいっぱいのとき
「遅刻しそう」「出かける前に家族とケンカをしてイライラ」「悩みごとがある」「体調が悪い(どこかが痛いなど)」など、周りのことを気遣っていられないような状態は多々あります。このような状況のときは、自分の問題に注意が向いてしまい、周りの人に対する「思いやりの心」は遠くへ追いやられてしまいます。
助けたいが、どうしてよいか分からないとき
「苦しそうに倒れているけど、自分ではどうしてあげたらよいか分からない」「何か困っているようだけど、どうしよう?」という経験はありませんか。ここには2つの側面があります。1つは経験不足です。実際に経験したことのない行動は、いざというときにはなかなか出てきません。もう1つはスキル不足です。人は自分の力だけで何でも解決できるわけではありません。その場の様子や周囲の状況をしっかり見聞きし、助けてくれる人に援助をお願いする(「援助要請」という)、状況を把握する能力とコミュニケーション能力が必要です。
周りに人がたくさんいるとき
周囲にたくさん人がいると、「こんなにたくさん人がいるのだから誰かが助けるだろう」と考えて、結局誰も助けないということが起きます。これは「傍観者効果」とか「責任の分散」といわれる集団心理が働くためです。
3. 解決策
の法則を知っているだけでも対策にはなりますが、この法則から脱する方法を考えると、スカウトの日々の訓練がいかに大切か分かると思います。
解決策1
からだを強くし、心をすこやかに!
他者に対して、思いやり行動がいつでもとれるようになるために、まず必要なのは「自分の心身を思いやること」です。日々の生活において自分の心と身体が健康な状態でないと、他者を思いやる余裕がなくなり、行動に移しにくくなることがあります。まずは今の自分自身の心と身体の状態をよく観察し、把握し、大切にして過ごしましょう。
解決策2
日ごろの訓練で「思いやり行動」を経験し、習慣化する!
身体で覚えた記憶はなかなか忘れることはありません。自転車は一度覚えてしまえば乗り方を忘れることはありませんし、スキーの滑り方もすぐに身体が思い出しますね。日ごろから「ごみを見たら拾う」「困っている人がいたら声をかける」などを習慣化していくと、日常生活でも自然と行動に移せるでしょう。また、誰かの「思いやり行動」を見かけたら「すごいね」「えらいね」と互いに声を掛け合い、意識して習慣にしていきましょう。
解決策3
援助要請スキルを磨こう!
ボーイスカウト日本連盟初代総長の後藤新平は、「人のお世話にならぬよう 人のお世話をするよう そしてむくいを求めぬよう」と提唱しました。しかし多様化、複雑化、高度化した現代社会では、困ったときに自分一人ではどうにもならない状況が多くなっています。そのような時代においては、適切な助けを求めることのできる情報収集スキルやコミュニケーションスキルが必要です。すなわち「人のお世話になれるよう」も必要なのです。それには、スカウト訓練の中で養われる情報収集力、観察力、推理力が大いに役立ちます。
「セーフ・フロム・ハーム」・安全委員会

ボーイスカウト日本連盟機関誌「SCOUTING」2020年9月号より

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