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鳥取連盟 米子第8団


山陰のほぼ中央に位置し、南東には中国地方最高峰の大山(だいせん)、北に日本海、西にコハクチョウ渡来南限地でラムサール条約登録の中海(なかうみ)がある、自然豊かな鳥取県米子市。ここに、創立55年を迎え、指導者の創意工夫で歩みを進める米子第8団がある。

 

愉快な仲間と楽しさを追求。

 

地元の若い力により発団

1965(昭和40)年、米子市青年会議所が地域の青少年健全育成について討議し、「ボーイスカウトの育成が有効である」と提唱した。

20歳から40歳以下の青年で構成される青年会議所の会員がボーイスカウトの指導者講習を受け、会員の子弟をスカウトに迎えて発団。発団から10年ほどは、青年会議所の青少年教育を担当する委員長が団委員長に就任するなどし、地域の若い力によって運営が行われた。現在も、育成母体は青年会議所にあり、合同行事の実施やチラシ作成など多くの支援を受けている。

発団2 年目には、岡山県日本原で開催した「第4回日本ジャンボリー」にも参加した。雪中訓練を行ったり、近隣の友朋団とナイトハイクなどの合同訓練を実施したりと、着実に本格的な野外活動を展開していった。また、青年会議所にはボーイスカウト委員会が設立され、発足から5年経つころには、隣町の境港市の団設立に貢献するなど、活動の普及にも貢献した。

以来、青年会議所とのつながりという特性を生かして、地域に密着した活動に取り組み、今年で創立55年目を迎える。

 

最大限に楽しむ

かつて、スカウトが100人を超え、カブ隊とボーイ隊がそれぞれ2 隊編成の時期もあった米子第8団。その後分封し、米子第11団を設立。現在も11団とは、同じ西部地区として協力しながら活動している。

現在の米子第8団はスカウト約45人。隊ごとに、また、その年ごとに、人数のばらつきはあるが、スカウトの興味や関心を大切にすること、そして最大限楽しく活動することを大切に、各隊が活動に励んでいる。「活動をとにかく楽しむ。常に最大限に楽しむことが大切」という指導者の言葉に、スカウトを想う指導者の心意気が表れていた。スカウトの人数が少ないと、十分な班制教育が展開できない。そこに焦りと反省はある。しかし、指導者が浮かない顔をしてはいられない。そこで、問題意識は持ちながらも、人数が少ないことを単純にマイナスとせず、プラスに捉えて考えることにした。

人数が少ない時だからこそ、スカウトそれぞれが希望することの実現に力を注ぐ。与えられただけの活動に参加するのではなく、スカウトが自分たちでレールを敷いて「楽しいと思う活動」「今できる自分たちの最大限の活動」に挑戦する。そして、スカウトと指導者がともに楽しむことで、ボーイスカウトという「ひとつの居場所」が確立する。これこそが、8団が展開するスカウトのための活動だ。

 

発想の転換と見える化の推進

スカウトハウスの場所が使えなくなってしまったときも、「場所がなくなって困った」ではなく、「今までよりも、親子連れが多く訪れる地域の場に出て、活動を知ってもらう機会になる」とプラスに捉えることにした。

実際に、人目につくところで活動するようになったことで、「子どもたちが集まって何かしている」というアピールになり、ボーイスカウトが活動していることを知ってもらうことのスタートラインに立てた。活動を見て興味をもってもらえたのはよかったが、新たな問題が見えてきた。初めは「何かしているけれど、何の団体で、何をしているのか」が伝わらず、声をかけられても「私たちはボーイスカウトで、……」と、ゼロから説明をするため、時間がかかるうえ、活動中に貴重な指導者が一人、説明に回らなくてはならない。そこで、効果的に活動をアピールできる方法を検討。「ボーイスカウト活動中」というのぼり旗を作成し、掲げることにした。

すると効果てきめん。第一声が「ボーイスカウトなんですね」にかわり、説明の時間短縮につながった。今では、10本で製作費18,000円ののぼり旗が、活動を後押ししている。

 

関わる人すべてが宝

スカウトのための活動。子どもがいなければ成り立たないのはもちろんのこと。だからこそ、新規スカウト獲得に力を注いできた。しかし、ふと気がつけば、今度は指導者や団委員の人手が足りず、役務を兼務する指導者も少なくない。その分、指導者は負担も増えるが、スカウトのために常に一生懸命な米子第8団。

隊指導者には、スカウトOBのベテランも、若手の富士スカウトOBもいる。特にビーバー隊は保護者から指導者になった女性陣が活躍し、新規スカウト獲得を支えている。団は、そんな協力的な指導者や保護者に常に感謝し、少しでも気持ちの負担を減らしたいと考えている。さまざまな都合でスカウトが減少し、これを気にする指導者には「良いことをしていると自信をもって活動していれば、仲間は増える」と伝え、自分たちの活動を信じ、仲間を大切にしてきたという自負がある。

前向きに、そして真摯に活動に取り組むことで、地域とのつながりを守り、信頼を得て、これからも地域に根付いた活動を続けていくことだろう。

お話を伺った皆さん。笑顔の中にも真剣なまなざしでお話しいただきました。

ボーイスカウト日本連盟機関誌「SCOUTING」2020年3月号より

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